桜通り歯科コラム
歯の噛み合わせがカラダを大きく支配する(雑誌Tarzanターザン取材)
歯の噛み合わせがカラダを大きく支配する(雑誌Tarzanターザン取材)
雑誌ターザンで記事を書いていただきました。
なかなか似顔絵が好評で、耳に届くのは記事の内容よりその話ばかりですが、凄く充実した内容を濃縮していただいてます。
私自身、若干シルベスタ.スタローンの様にも見える絵に描かれているほど実際は良いものではありませんが、内容に関しては事実を正しく書いていただけてます。
気になる方は是非調べにいらしてください。
濃縮していただいた記事の大元になるターザンの編集者の方々に話した内容を細かくはこんな感じです。
興味がある方は読んでみてください。
→まずはじめに私の診断の仕方は「全身のつながりの中にある噛み合わせ」といったもので、一般的な口が身体から独立しているような「歯科だから」といった診察、治療はしません。
噛み合わせが身体になんらかの影響を与えることはみなさんおおよそ知っていたり、感じていたりしますが、歯を治す時は口以外の体を診査しません。
それは歯医者は口の中が診療の持ち場だからですが、そのやり方でその人の体に適した噛み合わせが手に入れられるとは思いません。
私の求めるものは
「脳脊髄にストレスをかけない噛み合わせ」
を獲得することがゴールです。
布巾を絞るとき、外側だけを絞り、中側は絞らないということは不可能です。
全身が歪む、傾く、捻れるといった状況は内臓も血管もリンパも神経も絞れているということです。
そして一番中心には総ての中枢である脳脊髄が存在し、違うことなく影響をうけてしまいます。
私のやり方は頭蓋骨の歪みや頚椎の捻れをレントゲン写真で確認し、胸郭、骨盤…足の先まで可動や緊張の状態、歩行動作などを確認、口腔内模型を採取して口腔内のルールに沿わない点を洗い出して治療計画を立てることからはじまります。
身体との繋がりを考慮しないで、歪み、傾き、捻れている方向への噛み合わせの調整や変更をしてしまうことは布巾を絞り込むのと同じく状態を悪化させるわけですから、本来必須のことだと思います。
口の中を覗き混んでいるだけでそれを知ることはなかなか難しいでしょう。
親知らずやインプラントでの不調はまさにその現れです。
アスリートと一般人を区分けすることはありません。身体のシステムは人である以上同じなので、診断、評価方法に変わりはまったくありません。
ただし、患者側の求めるものが「健康」と「パフォーマンス」という明らかな違いを示しているので、アスリートの場合、競技や、競技特性、ポジションなどによる動作特性などを知り、照らし合わせながら診断をするという違いはあります。
私は野球、ラグビー、総合格闘技をしてきた経緯と親しい仲間に選手やトレーナー、施術者が多くいるため、幸せなことに知らない知識を補う環境が足りています。
健康とは個体差が大きく、過去未来の時間軸を持つ幅のあるものです。
パフォーマンスは健康という大枠の中にあり、もとめられるその幅はぐっと狭くなります。
パフォーマンスに目的意識をもつと、よりすこしの噛み合わせ、身体の変化、問題が大きな影響を与えていることに気づきます。
「アスリートにありがちな良くない噛み合わせ」という表現を「アスリート寿命を短くする致命的な噛み合わせ」に変えるならば存在します。
大雑把に25歳より若いアスリートは噛み合わせに問題があっても柔軟で感受性の豊かな筋肉、ファッシアによりパフォーマンスを落とすことなくやれてしまいます。
しかし、状態変化は時間の問題で現れてきます。
今は本当に有能なリカバリー機器、素材や、コンディショニングに携わる人達の技術、知識の向上によりその時間も延長されているように思いますが、それでも人である限り限界は来ます。
八重歯の噛み合わせと上下前歯が噛んでいない噛み合わせ。噛んだ時下の前歯が上の前歯に隠れて見えなくなるような深い噛み合わせ。中でもこの三つは致命的と言えます。
健康という大枠で考えても身体に問題を起こしやすい噛み合わせです。
八重歯と言われる高い位置に生えているのは萌出位置異常の起きた犬歯です。
犬歯は噛み合わせを考える中で136個もの下顎周囲にある筋肉の緊張バランスの舵取りをする重要な役割を担います。
頭頸部の不適正な筋緊張は頸部の回旋、側屈、 伸展、屈曲と可動域を奪います。
奥歯で噛むと身体が力む強い力が生まれます。
前歯で噛むと力は入りません。
これは歯により動く筋肉が違うということを示しています。
犬歯、前歯の舵取りは咀嚼をはじめとする三次元的に規則を持ちながらも多様に変化する顎関節、下顎の動きをコントロールし、奥歯の咬合状態に密接に関与します。
絶えず奥歯が当たる、擦れる咬合は極端に表現すれば身体が力みぱなしの状態になっているということです。
例として、テコで考えてみましょう。
支点から力点が近いほど強い力が生まれます。
下顎はテコのような単純な動きはしませんし支点は顎関節より下方で言われますが、力点が一番奥の歯にあればテコの原理と同じ効果が生まれるでしょう。
神経学的にも奥歯の方が前歯より敏感ということからも、動きの中での奥歯の噛み合わせは身体への影響を考える上では外せません。
その状況に噛み合わせの左右差があれば絶えず片側に引かれ、片噛みなどの癖が現れ、全身に歪みを生み出すことに繋がっていきます。
八重歯の位置に犬歯がなくともその左右上下の位置、噛み合う関係性は全身のパフォーマンスに多大な影響を与えるということになり、それが成長期にあれば、身体操作の得手不得手を、可動域の制限、連動の不具合を生み出していくことになります。
頭蓋骨のことも知るべきです。
頭蓋骨は組み合う21個の骨+下顎骨+舌骨の23個の骨の集合体を指します。
ひと塊りの骨ではありません。
その内わけが脳を支える脳頭蓋が8個、顔面をつくる顔面頭蓋が14個、+舌骨となります。
医科、歯科の世界ではこの立体的なパズルの繋ぎ目、縫合といいますが、縫合は成人になると癒着、癒合して動かなくなるという認識です。
ですが、これは間違っています。
私は10年近く勤務医時代から頭蓋骨、首のレントゲン写真で歪みを確認し、歪みを解くように治療計画を立案し、変化を確認してきました。
大きくグラグラと動くようなものではありませんがジグソーパズルの端と端を手で押さえ、力を加えて多方向に引けば歪みが生まれます。そこまで大げさな動きとも違いますが、現れる状態は似ていると思います。
頭蓋骨が歪むこと、脳を支えている骨が8個と複数なことが重要なポイントです。
下顎の骨は筋肉により、脳頭蓋と顔面頭蓋、舌骨と繋がっており、他の関節より圧倒的に可動域の広い2つの顎関節を有しています。
そして歯の影響を受けます。
下顎の位置がずれてしまっても、そこで歯が噛めば形としては成り立ってしまいます。
医科と歯科が別れ、各科が別れている弊害として
それにより身体の不調が起こっても軽傷であれば歯科医は責められません。
それにより疾病が発生しても、不妊に陥っても、肩が上がらなくなっても誰も歯のせいだとは思わないでしょう。
感覚的には40肩、50肩など、ほとんどが噛み合わせのせいです。
歯により骨は引っ張られ脳はストレスを受けるのです。
私には人生を通して達成したいゴールがあります。それは「噛み合わせと脳血流の変化」「噛み合わせにより脳下垂体の状態に変化が及ぶ」ということのデータをとり、世に出すことです。
噛み合わせを治すことで鬱の状態が改善されていきます。脳血流に変化がもたらされているからだと考えています。
生理不順は改善され、妊娠される方が多く、口コミでどこからか耳にして不妊治療で来られる方もいます。バセドウ病に改善が見られます。
これは下垂体という脳ホルモンを多く分泌する脳の一部分が脳頭蓋の内の蝶形骨の上にあり、その蝶形骨は顎関節と外側翼突筋により、下顎体部と内側翼突筋と繋がっています。噛み合わせにより生み出される強い力、歪ませる不具合によるストレスを受けているからだと考えています。
今は臨床結果としか言えませんがおそらくそうだと思います。
しかし医科と歯科が頭蓋骨が歪まないという考えのもと成り立ち、医科と歯科が別れている以上、多くの人に私の元にある臨床データと考えについて知ってもらい、興味を持ってもらい、協力を得ないと目指すゴールへはたどり着けないと考えています。
アスリートを診るようになったのも、この企画により短くとも多くの人に噛み合わせが身体との繋がりの中にあるということを知ってもらえるきっかけとなればと考えているのもその道筋にあると考えるからです。
原因不明で治療法の確立されていない疾病や不調の多くは噛み合わせに答えがあると思います。
サッカーのネイマールのプレイ中の脳活性はスペインリーグ2部の選手と比較して圧倒的に多くの部分で起こっており、バルセロナにいたシャビの脳活性は頭頂葉が特徴的に活性したというデータがあります。
頭頂葉は相手との距離感や自分の身体操作のイメージと行動のマッチングなどを司る場所で、そこが活性するということはサッカーの司令塔としては能力が高いということです。
歳を取ると筋力は十分でも低い段差につまずいてしまう。
これは身体の輪郭を感じる能力が薄れている、頭頂葉の活性が落ちているとも予想されます。脳活性とは良好な脳血流の状態があるということです
噛み合わせは頭蓋骨を歪め、脳血流に変化をあたえます。
「噛み合わせの悪さによるデメリット」
は身体の可動、連動にのみあらず、疾病、疾患、不調、体性感覚、にも及び、更には
下顎の後方には頭と胴体をつなぐ唯一のバイパスである首があり、酸素を取り込む気管、栄養を取り込む食道、脳へと繋がる動静脈、神経、リンパ、頚椎があり、頭蓋骨以上に噛み合わせの影響を強く受けるので、その総ては影響を受けますが、頚椎、脳幹部から伸びる副交感神経は直接的に、自律神経系も影響うけることになります。
寝つきが悪い、胃のむかつきなどの内臓の不調があるというのは代表例です。
顎関節の後ろには耳があり前庭系というバランスをつかさどる重要な器官があり、下顎位の変位、顎関節周囲筋の過緊張により圧がかかりますから前庭不活性の状態が起こり平行感覚への影響がでます。
堂本剛、浜崎あゆみ、スガシカオ、ネットで調べる限り突発性難聴を引き起こされている側の耳は下顎位置がずれこんでいる側、顎関節が押し込まれている側です。噛み合わせからの圧、ストレスがその問題の一因になっている可能性は否めません。
デメリットは他にもあり、一つや二つの話ではありません。
「マウスピースで得られる恩恵」
マウスピースはアスリートの怪我防止、身体の可動、連動の補正には最適です。
なぜならば噛み合わせの上に一枚板を乗せることで、従来ある噛み合わせからの不具合を生み出す条件を無しにするからです。
しかしその形には条件があります。
ここでも身体の歪みを正しく見切る必要があります。
マウスピースは噛み締めて力を生み出すものと思われがちですが、間違っています。
アスリートは動きの中で歯医者が噛ませて形をとる位置で噛みしめることはありません。
まして寝て噛ませた位置など論外です。
右にステップを踏めば前目の右側で、左にステップを踏めば前目の左側で噛みます。
可動と重心移動ができる形を与えてあげることが必要となります。
正しく調整が入ったマウスピースを入れれば崩れている可動、重心にしとかりと軸のある補正がもたらされ、従来の口腔周囲の怪我の予防のみならず、全身の怪我、故障の予防、パフォーマンスにも恩恵がもたらされると思います。
「一般人が噛み合わせを改善したり、マウスピースを作ることでどんなメリットが得られるか」
診断をする上で一般人とアスリートの区別の線引きはありません。アスリートのパフォーマンスに活きるものは一般人にも活きます。
しかし、身体の変形に関しては気をつけなければいけません。
私は頚椎ヘルニアの症状を緩和させるのが得意です。歯医者にはやれることと言い切ります。
頚椎ヘルニアは椎間が潰れてしまい、それを伸ばすことは難しいでしょう。頚椎の形が変わってしまって噛み合わせが変わっていなければ、余計な歯のあたりは増え、頸部筋の緊張は増すばかりです。変形が直せるものならば、そうするべきですが、治らないものならば、頸部筋が適正な状態にあるように、噛み合わせを合わせてあげる必要性があると思います。
人は老化します。関節間は薄くなり、ファッシアの滑走性は衰えます。姿勢は変化します。
歯が摩耗するようにできているのはその補償のためだと思います。
身体がどのような状態にあり噛み合わせがどこまでの変化をもたらすかを知らなければいけません。私はレントゲン写真を撮りながら、身体にいろんな運動と可動を入れて影響の変化とボーダーを見続けています。
今は脳の勉強をしています。
例えば噛み合わせは延髄の上「橋」というところで情報処理されます。そこでは身体の伸展動作が制御されているので、当然調整後は身体の反る動作には変化が現わせます。
原因不明腰痛の7割は前頭葉にある側坐核の血流が落ちているという論文があり、鬱も側坐核の働きが落ちているというデータが出ています。
噛み合わせにより変化がもたらされるのは脳に関わるものすべてに可能性があり、可動、重心の問題にもかかわります。
マウスピースは歯の条件を飛ばして身体への問題に影響をもたらすことができます。
しかし副作用があり、
状態が悪い人はマウスピースの効果も強いのですが、下顎の位置が補正されてしまうので、外すと噛めなくなってしまうことがあるので注意が必要です。
過去にコラムを書いてみようと思いかいたのがいくつかあるので、そのうちのいくつかを載せます。
「内村航平が完璧な着地キングで
白井健三が回転王子なわけ」
内村航平と白井健三
世界の体操史上でも間違いなく輝いている2人だが
その特徴は明らかに違う。
両者とも身体の隅々まで神経の行き届いた美しい体操を表現していることは同じだが、
内村航平は完璧な着地、
白井健三は唯一無二の体軸に対する回転を特徴とする。
着地と回転
これは全く違うようで問題点を共有するものである。
内村選手と白井選手の顔を真正面から見て、
笑った時の口角の上がりは左右違う。
内村選手が右
白井選手が左
これは下顎の位置がどちらにずれているかを診る一つの指標となる。
下顎の位置のずれは身体に及ぼす影響が大きく、
ずれを大きくしないように気をつけなければならない。
日々の生活習慣がそのずれには大きく影響する。
もちろん「口角の上がり」これだけですべてがいえるものではないが、目の高さをはじめ顔貌を併せて診ていくと2人には高い確率でその特徴と下顎のずれが一致しているといえる。
下顎を右にずらしてみる。
右には向きやすくなるが、左には向きにくい。
右には回りやすいが、左には回りにくくなる。
つま先は右にはいくらでも動くが、左にはすぐ制限がかかってしまう。
下顎を左にずらしてみる。
右にずらしてした時と全く逆の反応が身体に現れるはずだ。
そして2人は竸技の際、左回旋で体操の回転動作を行う。
下顎が左ずれ傾向の白井健三は回転力が強い。
内村航平にはその特徴はない。しかし左に回転しづらい、つま先が開きにくいということは左回旋で着地に入る際強いブレーキをかけることができる。
白井健三にはそのブレーキ力を生み出すことは難しい。
わかりやすいので下顎の位置で例えたが、もう一つ踏み込んで話せば複雑な噛み合わせの特徴になる。
うつ伏せ寝などの悪い影響を及ぼす生活習慣はこの傾向を強めることになり、身体のバランスを崩す。
片噛みなどもそうだ。
内村選手は両側とも八重歯なので、影響は出やすいと言える。
内村選手は回転不足、白井健三は着地のブレーキがかけづらくなるだろう。
これからの時間怪我なく日々の研鑽を重ねていただき、違う特徴をもつ2人の大喝采の中、東京オリンピックの表彰台での揃っての笑顔を観たいと思う。
「高速スライダー伊藤智仁の肘がなぜ壊れたか」
スライダーという変化球が代名詞になる投手の名を挙げるならば、
ダルビッシュだろうか。岩瀬か。往年の名投手稲尾和久だと教えてくれた人もいた。
しかし代名詞にするならこの人だろう。
「伊藤智仁」
ルーキーイヤーに7勝2敗、防御率0.91という驚異的な成績を残すも、右ひじを故障。プロ生活11年間の通算成績は37勝27敗25セーブ、防御率2.31。年間二桁勝利を記録したことはないがその才能への評価は知る人ならば誰もが高い90年代の名投手だ。
投げるスライダーは高速スライダーと呼ばれ、その当時テレビで観ていてもエグい曲がりかたをしていた。
投手は種類を二つに分けられる。
踏み込み足側の股関節で投げるタイプと
軸足側の股関節で投げるタイプ。
大谷翔平、マエケン、藤波慎太郎、内海哲也が
踏み込み足側の股関節でなげるタイプ。
松坂大輔、マーくん、則本、江川卓は
軸足の股関節で投げるタイプ。
ダルビッシュや岩瀬、伊藤智仁は前者のタイプにあたる。
前者のタイプは投球動作の際軸足の蹴りが弱くつっ立ち気味で骨盤の左回旋が早い、故に球をリリースする態勢時、体軸と頭の位置は踏み込み足より外に位置しがちで、球離れする手と頭の位置が遠くなる。
実際にやってみるとわかりやすい。
投球フォームの中で意図的に骨盤の左回旋を早めて大きくすると頭の位置を踏み込み足と同じ軸上に置くことは難しくなる。
頭と腕の距離が離れれば右肘の負担は増え、怪我をする可能性は高まる。
しかし、真横に曲がるスライダーに関しては遠心力が充分にかかり、最後まで指の引っ掛かりが保たれて優れたものになる。
皮肉にも頭と腕の位置が離れるほどにスライダーはキレやすくなる。
ダルビッシュはそのことを知ってか、このタイプにありながら
リリース時顎の位置を逆に入れ、回ろうとする骨盤にブレーキをかけて伝わる力のベクトルをホーム方向に集約するこてができている。
そう。このタイプ分けは顔貌、顎のずれを見ればわかる。
下顎のずれが軸足側か、踏み込み足側か。
噛み合わせのズレと骨盤のズレは相関性が高い。
伊藤智仁は骨盤の左回旋が早く、踏み込み足の股関節で投げる。球をリリースする際頭の位置はかなり身体から離れて左の外側に位置している。
スライダーは恐ろしくキレる。
そして肘の負担は増えた。
ちなみにもう一方のタイプは軸足のスネをマウンドで擦るほど重心を下に置きやすく、踏み込み足の上、もしくは内寄りに頭の位置を置きやすく、頭と腕の位置関係は近い。遠心力が弱い分、スライダーより手首のコントロールを必要とするカーブがキレやすい。
そして往年、可動域を失っていくと肩を痛めやすい。
江川や松坂がそれにあたる。
伊藤智仁の高速スライダーと短命に終わった肘の故障は下顎を含めた噛み合わせの左ずれ、骨盤の左回旋の早さに原因があったのではないかと思う。
皮肉ではあるが高速スライダーを生む身体の特性と投げ方がその結果を導いた。
しかし短くはあったがその存在感が記憶に色濃く残るカリスマ性の高い名投手だった。
「宇佐美貴史の輝きの取り戻しかた」
顔貌と噛み合わせを見れば、その人の身体を動かす特性、動かせない特性は読み取ることができる。
宇佐美選手の顔貌は下顎、特に左右下顎枝(左右の顔の長さと思ってもらってもいい)の長さに違いがあり、全体的には右への歪みを持つ。
それは異常なことではない。
誰もが成長期を超えて身体がシンメトリーに出来上がる事などほぼ皆無な中にあり、その左右差に少々大きな差を持っているという解釈で充分だ。
ただし、その大きな差は偏りとして身体に特化した癖として出やすいので、癖を放置しておくと、身体のねじれや歪みが強まり悲鳴をあげることになる。
そして身体操作の中にあっても癖は強まる。
右に顎をずらせば首、体軸は右回転しやすく、左方向は難しい。
単純に言えば宇佐美選手はこの状態だ。
このことをサッカーにおとしこめば、左サイドで球を持ち駆け上がり、右にカットインして、球を右足でコントロールして、左に身体が回旋しにくい特性を活かして、右足でシュートを打つ。
これが彼の得意な形である。
身体の歪みに大きな特性を持つものは特価した力を持つ。その代わりに大きな弱点も併せ持つ。
彼の場合、その歪みから逆の動き、左方向へのドリブル、左後方へのバック走はきっと苦手だと推測される。
競技レベルが高い中で活躍を望むならばそんな差のある得手不得手の存在は致命傷になりかねない。
下顎枝の長さに左右差を持つ方々の咬合調整も行う。偏りが強い分、重要度も高い。
マウスピースも有効な手立てになる。
マウスピースと言えば外傷予防と噛むことで出力増加を狙うためのものと考えられているが、噛み合わせの不正の上にその影響を隠せる厚みを与えられるのにその程度の期待は寂しすぎる。
靴のインソールのように個々にその身体がスムーズな連動を出せるように擬似の噛み合わせを与えればよい。外傷予防のみならず、全身の故障防止に役立つはずだ。
そしてそのマウスピースは宇佐美選手の左後方へのバック走、左方向へのドリブルの動きにも良好な変化を与えてくれるはずだ。
そしてまたきっと生意気なほどに輝き始める。
「大谷翔平は打者か投手か」
投げては日本最速の163キロのボールを投げる。
打ってはバックスクリーンに超特大ホームランを打つ。
大谷翔平は漫画でもしらけるくらいのことをやってのけてきた。
メジャーリーグにも二刀流で挑戦。
おもしろい漫画の続編は必ず読みたいものだ。
大谷漫画ももちろん観たい。大谷漫画にはそれくらいの魅力がある。
その総てを踏まえた上で、二刀流だと?メジャーを舐めるな!と数年前に大谷がアマチュアからプロになる際に続出したネガティブな発言ばかりの二刀流反対派の論客達とあえて今回は同じく叫んでみる。
これから先大谷翔平は打者としてとてつもない大成をなしとげる。投手は辞めることを勧める。
あえて投手をするならば、最終回、外野からマウンドに走ってきて、1人2人を相手にしてゲームをしめくくるといった短い時間の投手起用であれば良いと思う。
それでも充分漫画的だが。
大谷の顔を見てみると顎の先が左に入り、左眼が下がり、左側に捻れる歪みを持っている。
笑顔の口角は左が上がる。
テレビのインタビューでも右の股関節より左の股関節を使う方がうまいと自ら言っている。
要するにそれは首の回旋可動も骨盤の回旋可動も左側回旋が優位だということを示している。
大谷は投げる時踏み込み足を、強く腕を振る際、後ろに掻いてずらして強く地面を蹴る。
これは右軸足に重心を乗せた時、力を貯めるべく行う骨盤の右回旋が投げる動作とともに起こる左回旋の強さ負けて、前に伝える軸足の蹴り力にうまく変換できず、結果として骨盤の左回旋と連動する左脚で強く地面を掻く力で代償していることを示している。
右投げの投手の左股関節、骨盤の左回旋で投げるタイプであり、このタイプは投側の右腕と頭の距離が離れやすく、遠心力がかかりやすい。そうなると当然右肘には大きな負荷が生まれ、痛めやすくなる。
まして163キロを生み出すとてつもなく強い腕の振りだ。
投球回数を重ねれば重ねるほど心配は募る。
この身体の特徴を鏡に写す様にひっくり返してみよう。
それが左打者大谷の打者としての姿だ。
首の右回旋が少なくなってくると問題が出るが、
左股関節の使いがうまい、要するに骨盤の左回旋が優位なことは打者として軸足になる左に力を最大限に貯えやすく、右回旋が苦手なことは踏み込み足の骨盤の回旋を止める固さとなり、力のベクトルを逃すことなく球の方向に集約させることにつながる。
世界の王さんもイチローも同じ歪みを持つ。
大げさになるがおもいきり顎を左にずらして、投球動作と打つ動作を書いたことを意識してしてみるといい。少なからず理解できると思う。
大谷が右投げ左打ちの二刀流をすればするほど、噛み合わせで言えば左奥歯は擦り切れ、引っ掛かりが強くなり、首の右回旋可動域は失われ、骨盤の左回旋傾向は強まる。
打者としてはある程度首の右回旋可動を保たなければならないという課題は出てくるだろうが、投手としては右肘が壊れるという致命的な出来事につながる可能性は高い。
身体の補正はトレーナーやリカバリーに関わるスタッフが随時関わるだろうが、崩れていく噛み合わせへの補正や修正の重要性に気づけなければ、二刀流を長く続けることは難しいだろう。
提言するならば、大谷漫画は第2章打者編に移行するか、もしくは二刀流の夢の続きを見続けるならば噛み合わせへの一早くのケアを入れるべきだと思う。
今のまま二刀流はやめた方が良い。
打者大谷でメジャー挑戦する方が良いと言い切る。
しかし、大谷漫画はずっと見ていたい。
「私失敗しないので」
大門未知子
「私失敗しないので」の名言で有名なドラマ「ドクターX」のフリーランス天才外科医の大門未知子。
誰もできない難解な手術を颯爽と現れて成功させる。
個人的に医療ドラマが大好きで、どの作品でも主役のその姿勢と精神性に擬似世界とわかっていながらも憧れてしまう。
ただし、この手のドラマには落とし穴があることもわかっている。
生きるか死ぬかの状態を脱するための最前線に立つ執刀医にスポットライトを当てる。切り取りの医療場面には大きな感動や落胆など心揺さぶられるものが現れやすい。
楽しむためのドラマとしてはこれで不問だが、現実であれば、もう一つ、患者がその状態に陥ってしまった原因の追求とその改善に尽力する姿勢こそが天才外科医の腕と並ぶ重要性をもつ。
彼女のような敏腕の医師が現実世界でも存在するならば、それは間違いなく絶対的だろう。しかしながらその執刀と成功だけでは真の意味での治癒と言い切るのに弱すぎる。
ドラマの中で一喜びしたその後、時間的経緯を経て、比較的短期でどれもこれも病態の再発率は高いとなれば問題だ。
その再発率をおさえこむための過剰な薬剤投与があったりしてもどうかと思う。
再発の都度颯爽と大門未知子が現れ、「私失敗しないので!」とパート2、パート3の活躍が始まるなんてことではドラマの感動も薄ぼやけ、しらけてしまうだろう。
医科も、歯科も、今や各科に細分化され、専門性を高めている。そうでなければ知ること、各場面の判断が膨大である人体の世界において、起こる問題への対応、技術の正解性は高まらない。
優れたスペシャリストは生まれてこない。
これは正しい進歩だと思う。
しかしながら特化するということは足りないものが生まれるということを見失ってはならない。
いうならば各科の繋がりの部分がそれに当たる。
人の身体は繋がっている。
人体模型や解剖図を一度は見たことがあるだろう。
肺や心臓、胃や腸がどこにあるのかよくわかる。
しかし抜けてる組織があることに気づいてほしい。隣り合う各臓器の間は、筋肉の間は、空っぽの空間であるわけではなく、総てを繋ぐ組織で埋め尽くされている。
それは細胞レベルから繋ぐ重要な組織だ。筋肉が断裂したり、手術をしてその組織に硬く引きつるようなことがあれば、多少なりともつながる全身に影響は及ぶだろう。それが常になにか病気のような大問題につながるとは言わないが、必ずしも言わないわけでもない。
大門未知子が切れば、切った組織は少なからず硬くなり、柔軟性や感覚は衰え、引きつる。
そうやって身体は繋がっている。
歯を削ればどうだろうか?歯を抜けばどうだろうか?インプラントはどうだろうか?
下顎のまわりには100を超える数の筋肉があり、後方には脳と心臓をつなぐ唯一の道である首があり、生きるためには必要不可欠な空気を取り込む気道がある。そして歯は筋肉を緊張させ、強い力を生み出す。頭蓋骨を引っ張り、首をねじり傾ける。
雑巾を絞る時、表面だけ絞り、芯の部分は絞らないなんてことができるだろうか?
できないはずだ。
想像してほしい。頭蓋骨や首、身体の芯の部分には生きるための中枢である脳脊髄がある。
そして口は、元いえば歯は、身体から切り離されて、歯科という大門未知子の考えも及ばない医科とは違う特殊な特化の道を歩み続けている。
歯科と医科は分けられている。
繋がりから口は切り離されている。
身体の入り口にもかかわらず。
医科で原因不明の答えのいくつかは永遠に不明のままなのかもしれない。
原因はなんだ?
原因はどこにある?
探すなら。繋がりをよく見る必要がある。
ドラマに出てくるサブキャラクターの中に実は医科、歯科、各科の垣根を超えて原因を探し当てられるドクターXがいてほしい。
例えば大門未知子と名コンビの岸部一徳扮する神原晶が実はそうであるとか。
失敗しない天才外科医の価値はそうして初めて際立つのではないかと思えて仕方がない。
以上です。
桜通り歯科クリニック 松浦敦