噛み合わせと“首”の重要性
歯医者が首の話をするのも不思議に思われるかもしれませんが、噛み合わせを考える時、首は非常に重要です。
噛み合わせが全身に影響を及ぼすお話は他でも書いていますので、ここでは割愛させていただきますが、本来は全身を診ながら噛み合わせを考えるのがあたりまえです。
少なくとも首から上は近くて影響が強いので、しっかりとレントゲン写真を診ながら治療を進める必要性があります。
ある患者様のお話を紹介します。
首の重要性を強く感じた瞬間がありました。
その患者様は複数のインプラントを含む全体的な噛み合わせの治療を進めておられる方で、正直私の師匠の患者様です。引き継いで、今は私が担当医をしています。
調整の中で心臓の拍動を強く感じるという症状があらわれました。
心臓の検査を受けても異常は見つかりません。
噛み合わせの治療自体も順調にきていただけに、その悪い反応は意外なものでした。
違和感を感じ、すぐ頭蓋骨のレントゲン写真と首のレントゲン写真を撮り、提携しているバイタルリアクトというカイロプラクティックの療術の一つを施されている先生と連携をとるために、頚椎の下部まで見えるように、歯科用のレントゲン機器の使用をアレンジして撮影しました。
下がその写真です。
頭蓋骨は歪みもなくきれいな形をしています。口を大きく開いてもまっすぐに開き、開口筋のバランス、調子もよさそうです。問題を感じません。
しかし首を見てください。頭蓋骨から逸れて傾いています。ねじれも確認できます。これはなにかがおかしいと思い、横からの頚椎を確認すると、
頚椎は前に湾曲しているのが正しい形です。
逆湾曲しています。
しかも上から数えて4番目、5番目、6番目の頚椎の並びに違和感を感じます。
上下に運動を入れてみます。
4番目、5番目、6番目の頚椎が連なった形のまま動いていないことがわかります。
しかも椎間がかなりうすくなっています。
これはカイロプラクティックでサブラキセーションと呼ばれる状態です。
椎骨は外傷など力がかかるとずれることがあります。ずれると周囲の血行が悪くなり、椎骨の変形が起こり始め、椎間が薄く固くなり、最終的には椎骨どうしがくっついて動かなくなってしまいます。頚椎からは多くの中枢神経が出ていますから、それらは圧迫されることになり、体に不調が現れます。
今回心臓に症状が現れたのは噛み合わせを整えることで頭蓋骨の歪みがとれ、本来ならばそのまま体の歪みがとれていくはずなのですが、進行したサブラキセーションが動かないため、頚椎の上部と頭蓋骨の間に負担がかかったのだと思います。
その位置の内側には脳幹があり、そこは自律神経の中枢ですからね。
『頚椎の検診』があってもいいと思うのですが。
進行させると治すことができなくなります。
早期発見早期治療が最善で、予防がすべてです。
ちなみに今年、私も自分でレントゲン写真を撮り、サブラキセーションを発見しました。椎骨の変形まで進行した状態でした。
現在提携先の先生のところで治療中です。
大学生時代のラグビーをしていた時の外傷が原因ではないかということです。
今回は首の重要性について書きました。
特にムチウチや首を強い力で痛めた覚えのある人は要注意です。
気になるようでしたら、噛み合わせとともに検診を受けにきてください。