歯周病菌の体内への侵入経路
普通細菌は血液中では白血球など免疫細胞の働きにより、殺菌、貪食され生きることができません。歯周病菌はもともと血液とほぼ同じ成分の歯肉溝液の中で生存する細菌です。
歯周ポケット内から侵入
細菌の出す毒素により組織が破壊されたり、炎症を引き起こした歯周ポケットは怪我をして傷口が開いている状態とも言えます。簡単に出血しますし、血液に乗り体内に侵入できる状態とも言えます。
気道より侵入
肺につながる気道は口腔と密接しています。以前私の友人も歯周病菌が原因とする肺の一部が腐ってしまうという病気を患い、連絡を受け、連日徹底して口の中の環境を管理したことがあります。
よく問題視されるのは高齢者の誤嚥性肺炎です。肺炎は日本人の死因の第四位とされています。
その肺炎の何割が口腔内の細菌を原因に持つものか詳細はわかりませんが、気道と口腔は隣り合っていて、更には免疫力が落ちている上に正常な状態でも細菌の多い口腔の衛生状態が保たれないとなるとその割合も低くはないことが想像されます。
血中に侵入した歯周病菌は全身を巡ります。
死因の第二位とされる心臓病。その中でも「感染性心内膜炎」は歯周病菌の関与がほぼ間違いないとされています。また、おそらく関与しているのではないか?と言われているのが「虚血性心疾患」です。
死因の第三位とされるのは脳卒中。脳卒中は2つにタイプ分けされます。
血管が詰まり、その先に血液が運ばれなくなり、組織が死んでしまうのを「脳梗塞」、血管が破れてしまうのを「脳出血」と言います。歯周病菌の関連性が疑われているのは「脳梗塞」です。
先に関与が疑われている心臓病として「虚血性心疾患」と書きましたが、それは心臓の動脈硬化が進んで発病する病気です。発病の原因は「動脈硬化」です。
「動脈硬化」は心臓の動脈だけでなく、全身の血管で起こり得ます。
間違いなく脳の血管にも起こります。歯周病菌が動脈硬化に関わる報告は多数ありますので、動脈硬化を基盤として起こる脳梗塞は関与していると考えられると思います。
裏付けとして「歯周病の人とそうでない人の脳卒中の発生率を年齢など他の因子からの動脈硬化の危険因子を除外するべく補正して比較したところ、脳出血の発生頻度には差異がなかったのに、脳梗塞の発病頻度は歯周病の人に多く有意差があった」といった関係性を深く感じさせる調査結果は複数上がっています。
歯周病菌は全身への影響を及ぼします。
「動脈硬化」ひとつとって生活習慣や食生活、気をつけるべきことは多くあると思いますが、口腔内の状態を清潔に保ち、歯周病対策をしっかりすることは同じくらい、それ以上に気をつけなければならないことだと思います。
全身はつながっています。口の中環境を整えずして健康はあり得ないと思います。