予防歯科
虫歯や、歯周病、口臭・・・口の中の問題を予防するために、改善するために、どうすれば良いかをしっかりと知って、考えてみましょう
プラーク
歯垢(プラーク)は、食べカス、ではなく、細菌と代謝物のかたまりです。歯の表面にある、乳白色または黄白色の粘着性のある付着物です。その白いプラーク1mgの中には1億個以上の細菌が存在しています。多くの場合細菌は唾液で流されてしまいますが、唾液の流れが悪い場所に付着するとその場で増殖を始め、徐々に歯垢(プラーク)を形成します。むし歯の原因菌である細菌(ミュータンス菌)は、特に歯に付着しやすく、強固な歯垢(プラーク)を形成するため、早めに取り除くことが重要です。
※うがいは唾液の自浄作用と同じ効果です。大まかな汚れや付着を強める前の細菌を洗い流す効果があります。そう考えると、食後なるべく早くぶくぶくうがいやガラガラうがいより歯の間に水やうがい薬をしっかりと通すジュクジュクうがいが良いでしょう。個人差はありますが唾液は歳を取ってくると少なくなってきます。全身疾患の中には唾液が減るものもあります。喫煙者は唾液量が減りますし、口呼吸の人は口の中は乾燥しがちで自浄作用が働きません。そういう方々はうがいの回数を増やして虫歯や歯周病、口の状態から始まる全身疾患や不調、未病への予防へとつなげましょう。
歯石
歯石は歯垢(プラーク)が石灰化したもので、主に歯と歯ぐきの境目、はにつく灰白色の石のような硬いかたまりです。
*石灰化 血液中のカルシウムが組織に沈着すること。
歯垢(プラーク)は残ったまま放置すると、約2~3日で石灰化が始まり、歯石となり、ブラッシングでは除去できなくなります。歯石の表面は岩のようにでこぼこしているので細菌がつきやすく、増殖する足場となり、むし歯、口臭、歯周病などのリスクを高めます。
※衛生士さんがカリカリと一生懸命採ってくれているのはこの歯石です。例えばツルツルでなめらかな壁を想像してください。ホコリはつきますが、蓄積しづらく、掃除の際も簡単でしょう。その滑らかな壁の面に凸凹の岩肌があったら、そこにはホコリは付着しやすく、蓄積も容易でしょう。空気中に浮遊するホコリ、口腔内を浮遊する細菌、よく似ています。
そして何より歯肉が歯の表面に付着しようにも歯石があると付着で来ません。プラーク、バイオフィルムが歯石になってしまうと歯磨きではとれなくなってしまいます。私が学生の時、随分昔の話になりますが、歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシを渡され、口腔内を染色液で磨き残しを染め出し、チャートを取りながら、100%隅々まで口腔内を綺麗にするように指示されました。30分かけて徹底した清掃をした結果、クラスに一人も課題をクリアしたものはいませんでした。というくらい磨き残しなく口腔内を清潔に保つことは難しいことです。一回の磨く時間を長くとること、一日に磨く回数を多くとること、大まかな食べ残しを流すためうがいを多くとること、音波歯ブラシや電動歯ブラシを使用して清掃効率を上げる、歯磨剤や洗口剤の成分を補助として有効に使用する、そして定期的に専門的なチェックと清掃を受けに歯医者さんに行きましょう。
縁上歯石
縁上歯石はプラークと唾液中に含まれるカルシウムなどが結合したものなので、付着しやすいのは唾液線(唾液の出る穴)のある、上顎だと奥歯の外側(頬側)と下顎だと前歯の裏側(舌側)です。
縁下歯石
歯肉縁下歯石とは、歯肉縁より下、(なので歯肉縁上歯石は歯肉縁より上ということです)つまり歯周ポケットの内部、歯の根っこ(歯根部分)に付着した歯石のことで、歯周ポケットからの浸出液や血液に由来するヘモグロビンなどを含み、乳白色ぽい歯肉縁上歯石と違い歯石黒褐色でとても硬く、比較して付着する速度は遅いものの、歯面への固着力は非常に強く、除去は非常に困難です。
外からは見えない歯肉より下で付着するので、簡単に歯石取りはできず、専門的な器具を使って歯周ポケット内を探りながら歯石を取り除くスケーリング・ルートプレーニング(SRP)という歯周治療が必要で、何度も取り残しがないか加療を重ねることが必要です。縁下歯石の中にはよりたくさんの細菌が存在、繁殖しているので、歯肉の炎症が酷くなり、歯と歯肉が付けず剥がれてしまい、更なる縁下歯石が付着し、深い歯周ポケットが形成されます。この縁下歯石とそこに繁殖する大量の細菌が歯周病の一番の原因です。
縁下歯石が溜まると歯肉より下の歯ブラシの毛先の届かないポケット内でプラークが付着しやすくなり、更に縁下歯石が溜まり、その結果、歯周ポケットもどんどんと深くなります。深くなった歯周ポケット内の清掃できないたくさんの細菌は、歯肉に炎症を起こすだけでなく、歯を支える大事な土台である歯槽骨まで溶かしてしまいます。
プラークと虫歯。歯周病。口臭。心筋梗塞。誤嚥性肺炎。糖尿病。妊娠
*虫歯菌、歯周病菌の正体は何なのか?
答えは「数百種類の細菌と代謝物の塊=プラーク(歯垢)」です。
*プラークの中に虫歯を作り出すミュータンス菌という虫歯菌が存在します。食事した時の糖分を取り込み、酸を作り出し、歯を溶かします。溶かされたばかりの歯は唾液の成分で元に戻りますが(再石灰化)、清掃されず長く歯に付いていると虫歯となります。
*プラークの中の歯周病菌が作り出す毒素により、歯肉が刺激され出血したり、腫れたり、歯を支えている骨が溶けたりします。これが歯周病です。成人の約80%が歯周病と言われて、プラークを徹底して取り除くことで予防や改善することができます。
*プラークに含まれる細菌がガスを出すため、臭いとなって出てきます。なので、虫歯や歯周病によっても同じ理由で口臭が起こります。
*プラークの中の歯周病菌は、歯周ポケットから歯肉の中に入り、そして毛細血管から大きな血管へと移り、そして心臓へと流れ、全身をめぐります。心臓に発症する細菌性心内膜炎に関わる細菌は、多くのケースで口の中の細菌が原因と言われます。また、歯周病菌が血液に感染すると血栓が出来やすくなり、動脈硬化、心筋梗塞を引き起こしやすくなるとも言われます。
*口腔と気管、肺は近接して近く、食べ物や唾液を飲み込んだ時、誤って気道へと入ってしまい、歯周病菌が肺や気管支に感染することによって肺炎を発症します。高齢の方や寝たきりの方などは、誤嚥したものを吐き出したり、咳をして戻したりといった動作が難しくなっているので、細菌を体の外へ出すことが出来ず、感染しやすくなるため注意が必要です。
*歯周病と糖尿病の相性は悪く、互いに状態を悪くし合います。歯周病細菌によってつくられた炎症物質、血糖値を下げるインスリンの働きを抑制するため、糖尿病を悪化させてしまいます。糖尿病の状態は、歯周病菌に対する防御力が低下しているため、細菌が感染しやすくなり、歯周病を悪化させることになります。
*妊娠中は、女性ホルモンの分泌が増え、また食事の変化などにより口腔内環境が細菌が増殖しやすい状態になりやすく、また、つわりなどでなかなか歯磨きができなくなり、歯周病が進行しやすい傾向になります。母親が歯周病の場合、低体重児出産や早産となる確率が7倍以上になると言われています。
プラークとバイオフィルムと歯石の違い
プラークは、虫歯菌や歯周病菌をはじめとする細菌の固まりで、その細菌の数はわずか1mgに数億から数兆潜んでいます。プラークは組織の約8割が水分で、残り2割が有機質。有機質の大半は細菌とその代謝物です。食後8時間程度でつくられると言われているこのプラークは食べカスとはまったく違うものですが、細菌は食べカスに含まれる有機質を栄養にして活発化するので、まったくの無関係というわけではありません。食べカスを残さないことは、細菌の活動を抑えるうえでとても重要です。
バイオフィルム
結論から言ってしまえば、バイオフィルムとプラークは同じものです。プラークの構造がお風呂の排水溝やシンクの三角コーナーなどで見られるヌルヌルと同じ構造であることが、研究によって分かってきました。細菌は集合してプラークを形成しその表面にバリアを張ります。そのバリアをバイオフィルムと呼び、バイオフィルムがある上からいくら薬剤を投与しても中の細菌には届きません。機械的にそれを剥がして初めて細菌への効果を見込めます。
歯石は、歯に付着したプラークが唾液に含まれるカルシウムやリン酸などと反応して石灰化し、石のように硬くなって歯の表面にくっついたものです。歯石は「死んだ細菌の固まり」であり、そのものが歯周病を引き起こす原因にはなりませんが、プラークが付着、繁殖を起こしやすく、歯石の上にプラークが付着して石灰化するとさらに大きな歯石となり、歯茎の炎症をさらに招く結果となってしまいます。プラークが歯石になってしまうと歯磨きで取り除くのは不可能です。
歯周病の予防・治療は時間との勝負
食後8時間ほどでプラークがつくられ、そのプラークは約48時間で歯石になってしまうことが明らかになっています。
歯磨きは食後すぐにした方が良いのか?それとも30分ほど待ってからした方が良いのか?
この質問は意外とよく頂くもので、2011年にアメリカの歯科団体が発表した一説がメディアで取り上げられたのが元でしょう。これまでの歯磨きの常識を覆すということで話題になりました。
この説の内容は、食事をした後すぐは、唾液が口の中を中和する力よりも食べかすの酸の力のほうが強く、歯のエナメル質を溶かしてしまう。その状態で歯磨きをするとエナメル質が削れてしまうので、歯の再石灰化がされる食後30分以上経過を目安に、その後歯磨きを開始したほうがよい。というものです。確かに食後すぐは口腔内が酸性に傾き、唾液の効果が現れると共に次第に中和が進むのは様々な文献で確認しても確かです。どのタイミングで歯磨きをし始めるのが良いかは歯科医によって意見が様々でしょう。食後直後に歯磨きをし始めるというのはそんなせっかちな状況はあまりないとは思いますが、寝坊して大急ぎの時くらいでしょうか、意識の高い方の中にはいるのかもしれませんね。しかしタイミングを考えるならばまずは歯が食べかすの酸にやられているのをみすみす唾液の効果待ちで見逃しているのは如何なものかと考えてしまいます。唾液のことを考えてみても、サラサラしている漿液性の唾液の方、ネバネバしている粘液性の唾液の方、それ以前に量の多い少ないもあります。そう考えると待つべきと設定されている30分という目安も不確かなものになってきます。なので食後歯磨きを開始するタイミングを考えるほど口腔内の状態を真剣に考えるならば、まず直後口腔内が酸性になってしまっている状況をできるだけ早く中和することでしょう。食べかすの酸と唾液の関係の変化を何の手も加えず時間を気にするだけならば、食べかすを洗い流すように早々とうがいをするべきでしょう。普通の水を使用するだけでも酸性は中和されます。
うがいに重曹を使用する
重曹を水に溶いてうがいに使用すると口腔内の酸性の中和に、より効果的です。どこかで重曹で歯を磨くと歯が白くなるとか聞いたことがあるかもしれません。歯を磨くのに使用するのは控えた方が良いです。口腔内に使用するならばベーキングパウダーなどに使用されている食用のものにしてください。台所の掃除や洗濯などに使用する工業用のものは使用しないでください。また歯を白くするために歯磨き粉の代わりに使用するような使い方は前述したように、控えた方が良いと思います。重曹で歯磨きをすると歯に付着した汚れや、ヤニ、ステインなどが落ちて白さは増すようです。しかしながら、台所の清掃で使用されるように、食用のものでも歯のエナメル質からすると粒子の粗いもので、傷着いてしまいます。普通の歯磨剤を選ぶ際にも言えることですが、研磨剤、歯磨剤の粒子の粗いものは同じ理由から控えてください。エナメル質が傷つくと、白さが増しても汚れが付着しやすくなることにもなりますし、知覚過敏にもつながる恐れがあります。
というわけで重曹のことを知りましょう
重曹はアルカリ性なので酸性の物質と互いに中和するという特徴があります。
重曹は化学式でNaHCO3と表される炭酸座トリウムのことです。昔は重炭酸ソーダ(曹達)と呼ばれていました。略して重曹になったそうです。重曹は水に溶けにくく、しかし溶けた水溶液は弱塩基性を示すという特徴を持ちます。
HCO3- + H2O ⇔ H2CO3 + OH-
HCO3- + H2O ⇔ CO32- + H2O+
うがいに使用する重曹水が弱アルカリ性なのはそういうことです。酸解離定数を考えるとそれぞれ6.3,10.3なので、pHが8.0から8.5くらいになることがわかります。アルカリ性の物質は油同様にタンパク質も加水分解してしまいます。これはうがいに重曹水を使用しすぎると起こるデメリットにつながります。デメリットについてはまた後ほど書きます。タンパク質を加水分解すると、タンパク質を構成するアミノ酸同士を繋ぐペプチド結合を切断してアミノ酸やアミノ酸の連なるペプチドになります。
重曹のアルカリ性は非常に弱いため肌で感じることは難しいですが、例外じゃありません。この例外ではないというところがデメリットです。
重曹水でのうがいは口臭にも効果がある
口臭以前に悪臭の主な原因は何か?
- アンモニア臭に代表される窒素化合物
- 汗や体臭などの脂肪酸系の物質
- 糞尿などの硫黄化合物
この三つに分類されます。口臭の原因は約90%近くが口の中にあると言われています。口の中の嫌気性菌という細菌がタンパク質やアミノ酸を分解して揮発性硫黄化合物(VSC:Volatile Sulfur Compounds)という物質を作ります。これが口臭の主な原因物質です。そしてVSCは舌苔と言って舌の表面を白くする中に作られやすいとされています。なので口臭予防としては当然徹底した歯磨きやうがいはもちろん必要です。その上で舌清掃をして舌苔を除去する、作らないように舌を清潔に保つことが効果的です。舌苔のつき方には個人差がありますがその差には舌の運動や唾液量が大きく関与していると考えられています。時間帯的には起床時に、また絶食時にもその量が増える傾向があるようですが、それもやはり起床時は就寝時に舌の運動は落ちていますし、口呼吸など口腔内が乾燥しやすい状態で唾液量が減っています。絶食時も唾液量が減ると言われていますから同じ理由かと思いますね。口臭の原因がわかったところで、重曹水でのうがいに効果があるかどうかということです。先に悪臭の原因を3つかきましたが、重曹は全ての悪臭を抑えることができるわけではなく、脂肪酸系の酸っぱい臭いと硫黄化合物の腐ったような臭いを抑えることができます。口臭の原因が揮発性硫黄化合物(VSC:Volatile Sulfur Compounds)なので、効果はあると言えるでしょう。しかしこれにはカラクリがあります。それは酸性の臭い元物質に弱アルカリ性の縦走をかけることで水と二酸化炭素を発生しながら中和するためです。この反応は別に臭いの元物質が分解されたわけではありません。そもそも臭いとは気化した臭いの元物質そのものです。臭いの元物質がなくなるわけではなく、分子をイオン化させることで気体になるのを抑えるという仕組みです。口臭を抑える効果はあります。しかしごまかしていると言っても仕方がない部分もあるのでやはり、使用してもしっかりと元物質を機械的に除去するように、清掃を頑張りましょう。
重曹水を使用することのデメリット
①重曹水は弱アルカリ性とはいえアルカリ性ということに変わりはないのでタンパク質は少なからず分解されます。なので使用しすぎると歯肉が傷む可能性があります。というより傷むでしょう。うがいに常用するのは少々危険がありますので、回数に決まりはありませんが、加減をしながら使用しましょう。
②重曹は塩分が多めです。なので高血圧や塩分制限のある方は飲み込まないように注意して、使用頻度も毎回ではなく二日に一度や三日に一度という具合に体調を意識して時々使用するようにしてください。体調に問題がなくても大量に飲み込むと健康に影響がある可能性があるので気をつけましょう。
③普段口の中は中性、もしくは弱アルカリ性の状態です。そして飲食時に酸性に傾きます。そして虫歯が作られます。一方歯石が作られやすい環境はというとアルカリ性です。アルカリ性では虫歯は作られませんが、歯石が作られやすくなるわけです。重曹水を使用すると口腔内がアルカリ性に傾きがちになります。ということは虫歯や歯周病の予防や口臭予防には良いですが歯石が作られやすい環境になることを忘れないようにしましょう。歯石がつくと自分の力では取れず、細菌にとって増殖の足場を与えてしまうことになります。適度に間隔を空けながら使用し、元物質となり得るプラークやバイオフィルムをしっかりと除去することをお勧めします。
重曹水の作り方
前に書いてあるように重曹水は間違っても工業用ではなく、食用のものを使用してください。インターネットにもたくさん情報は出ていますが、500mlのペットボトルに小さなスプーン一杯、3グラムほどを入れてしっかりと振ったら出来上がりです。ミネラルウォーターだと長持ちしないので水道水の方が良いようです。しかし最近は水道水を極力使用したくないという人もおられると思います。そういう時はうがいに使用する分だけに、ミネラルウォーターで毎回作って使用すると良いでしょう。
歯医者さんあるある/虫歯はあまりできないのに歯石がたまりやすいという人
歯石が付着しやすい人の特徴は
- 唾液の量が多い
- 唾液のpHが高い(アルカリ性に傾いている)
- 唾液がサラサラしている
なぜ歯石が作られることと、こんなに唾液が関与しているかというと、歯石は磨き残し、食べ残しなどが関係して酸性された歯垢(プラーク)が唾液に含まれるミネラル成分と結合して作られるからです。歯石の内容成分の約8割はリン酸カルシウムやリン酸マグネシウム、炭酸カルシウムといった無機成分で残りの2割が細菌である有機体と水です。人にとっての必須ミネラルとはナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、どう、亜鉛、セレン、モリブデン、要素。この元素のことを言います。なのでミネラル成分の含まれる唾液の分泌量が多いと、当然のごとく石灰化しやすく歯石は作られやすくなります。粘着性のある唾液よりもサラサラとした漿液性の唾液の方が石灰化を起こしやすいと言われています。アルカリ性に傾いた唾液は細菌が発する酸を中和する作用がありますし、溶けたエナメル質の再石灰化も促す作用があるので虫歯になりにくいという良い面があります。しかしながら歯石は作られやすいということです。唾液が多いことが悪いことのように思えてしまいますが、歯石を作りやすいというデメリットがありますが、少ないよりも多い方が健康に関してメリットは計り知れないほど多いです。唾液に関しては後ほどまた詳しく書きます。しっかりと歯を磨いて歯石ができないように気をつけていきましょう。どうしても磨けない場所、手の届かない場所は誰にでもあります。なのでみなさん、定期検診と、しっかりとした専門的なクリーニング、歯石除去は受けるようにしましょう。
歯に付着する着色(ステイン)
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、醤油、ソース・・・日常の飲食の中で歯に付着する色素、タバコのヤニなど慢性的に沈着するくすみや汚れのことをステインと呼びます。もう少し詳しく説明しましょう。着色(ステイン)のことを知る前にペリクルについて知ってください。
ペリクルとは?
ペリクル(獲得被膜)は歯の付着物です。歯面を覆っている被膜です。歯磨きで剥がれるのですが、数分後には形成されます。歯には常にペリクルが存在しています。ペリクルには細菌が存在しないのですが粘性が高いので、食べかすや細菌を付着しやすいという特徴を持っています。細菌を付着させやすいと書きましたがどの細菌も付着させるわけではありません。歯垢が形成されやすいように、成熟しやすいように選択的に細菌を付着させ、その後歯垢の中に存在する細菌へ栄養を送る役割も担うという特徴を持ちます。歯垢と混同して思われますが歯垢とは全く違うものです。悪いものだと思ってしまいますが、有害作用と防御作用のどちらの面も持ち合わす特殊なものです。有害作用は歯垢が作られる足場となり、成熟させるという作用ですが、防御作用としては歯面をペリクルが覆うことで歯質を外来からの刺激から守ります。特に酸の侵襲に対する保護作用が強く、その他にも歯質が脱解するのを抑えると同時に再石灰化を促すという作用も持ちます。このペリクルにタンニンやニコチン、カルシウムや金属イオンが結びつくことでステインとなります。ペリクルは虫歯を作る酸から歯を守り、酸に溶け出したエナメル質を修復しながらも虫歯の原因となる歯垢の足場となり、成熟させ、ステインも吸着、作成するわけです。良いものなのか、悪いものなのか・・・しかし歯の防御のためには欠かせないものです。ペリクルは長期であるとエナメル質に定着してしまうので、その上にステインが積み重なり、黒ずみ、黄ばみとなってしまうわけです。結局は感覚を開けすぎず、しっかりと歯磨きをして歯垢とともにペリクルも常に剥がし、新しいペリクルを獲得していくことがステインの付着を防ぐということにつながるわけです。